tsu-tusac’s blog

山とスキーの記録

201508 夏山梓川二ノ俣谷から中山

 

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梓川畔から中山

 

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二ノ俣谷の渡渉

 

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キャンプ地

 

 

中山へ石楠花の藪漕ぎf:id:tsu-tusac:20151008165743j:plain

 

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中山頂上

 

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梓川から中山を振り返る

 

 夏山候補地はやさしい沢で焚き火が出来て、いいところはないかと探していたが、槍沢の手前の二ノ俣谷というのが見つかった。明るくて良さそうだと思ったが、中流域から滝場が始まり草付きの高巻きが難しいという記録があり、それなら二ノ俣の途中の峠沢から中山乗越を越えて一ノ俣谷の上部を遡行するというのはどうかと計画を立てた、一ノ俣はかつて道があったが今は荒れてしまい、下部は滝が連続してなかなか大変そうだが、上部は悪場がなく東天井のカールもお花畑で良さそうなので、なかなかいいコースかなと思ったが、木邨から今の我々には体力的に厳しいのではないかと危惧が出され、考え直した結果、二ノ俣の峠沢出合にベースを置き、中山乗越から中山2492mを往復するプランに変更した。中山は一ノ俣と二ノ俣の間の尾根の末端のピークで、あまり人が行かない秘峰と言ってもいいかも知れない。体力的にも空身ピストンなので、仮に頂上まで登れなくても厳しい事態に陥ることはないだろう、ベースとなる峠沢の出合にはよいサイトがあるということなので、それも楽しみということで決定した。

 

参加者  木邨光宏  益崎健二郎  大谷尚史  片岡ひとみ  伊東 毅

 

8月9日 府中本町(7:00)=松本IC=沢渡(12:30)=上高地(13:15)~徳沢(15:15)

最初は例年のように鉄驪荘に集合して1泊後出かける積りだったが、浜野さんの奥さまの体調がすぐれないので取りやめ、朝発で徳沢まで入ることにした。木邨、大谷、益崎、伊東は府中本町7時出発、片岡は仙台早朝(5時前)発、沢渡合流を目指す。途中新島々の駅前で時間待ちをしたり、風穴の里の蕎麦屋で昼飯を食べたりしている間に片岡車が沢渡に先着、想定よりずいぶん早い。沢渡のアルピコタクシーの営業所で中型5人乗り、ザックはトランクのふたを開けたままチューブで固定、1台4,200円で上高地まで。伊東車、片岡車はアルピコの口利きで近くの筒木駐車場へ、4泊1台2,000円。普通に駐車場代1台1日600円、バス1人1,250円より、ずいぶん安い。これまでも何回か利用しているのと、事前に連絡して頼んであったのが奏功した。上高地で荷分けして、人ごみの中を出発、徳沢まで2ピッチ、いい天気だが木陰の道なので助かる。今日の宿は徳沢園、何度も前を通ったが泊まるのは初めて、立派な宿で山小屋とは言い難い、相部屋2食付き10,000円。相部屋と言っても一人1畳、仕切りがあり、荷物置き場もあり、ゆったり出来るのがいい。風呂に入って、外来者が入れる道草食堂で生ビールにワイン、夕食は中の宿泊者用食堂、豪華メニューで満腹。木邨、益崎は7時前に就寝、そんなに早く寝たら夜中に目を覚ましてしまうので8時過ぎまで時間を過ごしてから、睡眠導入剤を飲んで就寝、ぐっすり眠れた。

 

8月10日 徳沢(7:55)~横尾(9:30)~一ノ俣出合(10:25~10:45)~二ノ俣出合(10:55)~  沢靴履き替え(11:05~11:20)~中山沢(12:25)~そうめん(12:30~13:30)~右岸沢①(14:40)~右岸沢②(15:10)~峠沢出合広河原BP(15:45)

 徳沢園の朝食は7時から、したがって出発はゆっくり、今日の行程は短いからいいだろう。徳沢を出て梓川の岸に出ると正面に中山が見える。緑に覆われているが、鋭い三角錐の堂々たる山だ。今まで気にしたこともなかったが、これなら登る価値あり、すっかり嬉しくなった。おじいさんペースで横尾まで1ピッチでは届かず、手前でひと休み、横尾でトイレ休憩。ここまでは下界ということらしい、横尾を出るとここからは登山道と看板が出ていた。一ノ俣出合で休憩、二ノ俣出合はすぐなので休まず、人通りがなくなったのを見すまして右岸の樹林へ入る。踏み跡があるがキジ道でもあるので足元注意、10分ほど林を歩いて河原に下り、靴を履き替え、ハーネスをつけ、ヘルメットをかぶる。伊東はフェルトの沢足袋、木邨は地下足袋モンベルのフェルトソール、他の3人は沢靴、沢足袋は底が軟らかいので荷を背負って歩くのはどうかと思ったが、今回は歩く時間も短いので問題はなかった。二ノ俣谷は花崗岩の明るい谷で中流までは滝もゴルジュもなく基本的に河原歩き。ところどころ崖や大岩が進路をふさぐので左右に渡渉するが、この夏は猛暑、好天続きで水量が少ないので助かる。せいぜい膝上くらいまでで、大抵のところは渡れるので、ザイルの要なし。どこか昼飯のそうめんを作る場所を探して行くが、最初の支流、中山沢(仮称、中山の頂上に突き上げている)出合は左岸で日陰がなく暑いので、その先の木陰の伏流水の出ているところで休憩、そうめん500gを茹でる、つゆは五島のあご出汁、しょうがとみょうが、ねぎを刻み、海苔、鰹節、梅干しと薬味類も豊富。夏の沢歩きにはこれが一番、ちょっと時間がかかるので余裕がある時に限るが。この上も右、左に渡りながらの河原歩き、右岸からガレ沢が2本入って間もなく、大きく開けて広河原に出る。このころから雨がぽつぽつ降ってきた。いくつか幕営適地があるとのことなので、一人先行して泊まり場探し、左岸に2か所良さそうなところを見つけた。1つ目は平らな砂地だが大水が出たら流されそう。その先左岸、河原から3mほど上がったところに平らな台地、まばらな小灌木の間に5人寝られそうな空き地があり、焚き火の跡もあった。高台の適地というのはどうやらここらしいが、高台というにはやや低いので、他にないかザックを置いてさらに登ってみたが、すぐ左岸に峠沢が流れ込んでおり、あとは樹林と薮で見つからなかった。灌木にザイルを渡し、タープを張り、シートを広げるが、5人分にはやや足りない。ビニールシートを1枚継ぎ足してしのげるかというところ。雨が降ると端の方は濡れてしまうが、シュラフカバーもツエルトもあるのでなんとかなるだろう。蚊取り線香を何本もつけて虫よけ、大谷はエッセンの準備、木邨は薪集め、雨は降ったり止んだりだがたいしたことなく、焚き火はすぐに点いて良く燃え出す。今回は焚き火で串焼きをやろうと、金串を5本調達してきた。ベーコンとねぎ、しいたけを刺して一人一本ずつ、すぐ黒焦げになるが、煙の味がついて美味い。塩やたれなど、調味料はいらない。飲み物は銀嶺月山、さつま焼酎赤兎馬ジャックダニエル、ジムビーム、ブランディーVSOP、ジン、シェリーと少量だが濃い酒がいろいろ。つまみもたくさんあって、ご飯に手が出ない。雨も上がって夜は星空になった。

 

8月11日 峠沢出合(7:20)~峠沢二俣(8:00)~靴履き替えデポ(8:50~9:10)~中山乗越(9:50~10:20)~中山頂上(11:50~12:40)~中山乗越(13:30~13:45)~靴デポ(14:10~14:35)~峠沢出合BP(15:50)

 雲が多いがまずまずの天気、今日はサブザック行動、BPからすぐ峠沢に入る。水量は少ないが沢靴(足袋)でジャブジャブ登ると1ピッチ弱で二俣、赤い標識があるというので探したが見当たらない。少し上まで行ってみたが、この沢に間違いないので、入ってみると左手本流との間の薮に赤布が下がっていた。沢は細いが水流があり、苔むした岩を登って行くとやがて水が消える。なおも沢型を追って行ったらガレ沢になったので、靴を履き替え、沢靴を立ち木にぶら下げてデポする。傾斜が急になり、少し右に寄り過ぎているような気がするので、ガレ沢を離れて左にトラバースして行くと草に隠れた踏み跡があった。傾斜はますます急になり、木や草を掴んでの登り、今回はアプローチシューズとして古くなったKeenのタウンシューズを履いてきたのだが、これが失敗、靴底がすり減ってツルツルなので、急なザレの踏み跡で何度も滑った。やっぱり5・10のアプローチシューズにすべきであった。1ピッチ弱にえらい思いをして、何とか中山乗越に到着、ここにも標識があった。やせた尾根のコルで、登って来た二ノ俣側も反対の一ノ俣側も急な斜面になっている。ここからは樹林の尾根歩き、割合はっきりした踏み跡がある。ただ1個所、左トラバースに入るところを見逃して、シャクナゲの薮漕ぎを強いられたが、尾根の左側にザレと草付き、灌木帯をつないで踏み跡が続いている。尾根の東側なので日が当たって暑い。左手に一ノ俣をはさんで常念、乗越の小屋、横通し、東天井が見えているが、ガスがわき出した。乗越から2ピッチ、トラバース道から右に登る踏み跡があって、そこを登ったところが最高点、中山の頂上だった。ハイマツの中に岩がいくつか出ているだけで他に何もない。眺望は素晴らしい、正面に赤沢岳、西岳、その上に槍から穂高の稜線、涸沢カールの天幕が見える。左に梓川のゆるやかな流れ、さらに左は常念から大天井、この角度から眺めるのは初めて。ひと気がなく静かな頂きにわれわれ5人だけ、それぞれ手ごろな岩に腰を下ろして昼飯、しばし幸せな気分にひたる。下りは来た道だから分かりやすい、薮漕ぎもなく1ピッチで乗越。デポ地点までGPSで一直線、靴を履き替えガレ沢を下ると苔むした沢に合流、わき出している水がうまい。あとは水流を下るだけ、峠沢出合のBPまで2ピッチ弱だった。今日も焚き火で串焼き、ベーコンの代わりに魚肉ソーセージ、これもうまい。コーンビーフのホイル焼きもいいつまみ、残った酒をあらかた消費し尽くした。雨の心配もなく、ゆっくり寝む。


8月12日 峠沢出合(7:20)~中山沢1750m(9:20)~出合前靴履き替え(10:20~10:50)~横尾(11:50)~徳沢(13:50)~明神(14:40)~上高地(15:50)=沢渡(16:20)

 今日もいい天気、快適だったBPを撤収、エッセン分軽くなった荷物を背負って出発。下りも右左に渡渉を繰り返し、3ピッチで出合の橋が見えるところで靴を履き替え、登山道に飛び出す。横尾、徳沢、明神と1ピッチずつ刻み、明神からアルピコに電話、下りの中型車を頼む。上高地に着いたのが4時前、海上自衛隊あがりの運転手、小林さんの話を聞きながら沢渡まで。さて結構な時間になった、これから仙台へ帰る片岡さんは大変だ、東京組も府中本町から千葉の検見川浜まで電車に間に合うかどうか、それに疲れてみんな運転したくない。どこか空いている宿はないかと、まず石川旅館に電話したが満室、沢渡付近を聞いてみたが、もうどこも空いてない。この時間になって5人というのは無理だろうなと絶望的な気分、とりあえず汗を流そうと梓湖畔の湯、そこでもらったパンフレット観光協会がもしかしたらと言うので最後に電話した杣の家、おじいちゃんが出て、5人ね、あることはある、特別室、夕食はこれから作るから遅くなるけどいいかと。やった!そこお願いします、これから行きます。国道から山の斜面を登ったところに3階建ての立派な宿、受付に電話のおじいちゃんがいて、2食付き1万4000円、値段もそんなに高くない、何より今晩寝られるところがあるだけで御の字。部屋は12畳、立派な部屋だ、この宿で一番いい部屋だと言っていた。なぜこの部屋が空いていたのかは分からない、急なキャンセルがあったのか、特別な客に備えてリザーブしてあったのか、なにはともあれ、腰を落ち着けてビール、3本+2本、やがて夕食が出来る。まだ何組か残っている広間に5人分の席、ご馳走がいっぱい。急に来てあらためて作ってくれたおかずを残すことは出来ないと、ビール腹にもかかわらず必死に完食。下を向くのも苦しいほど満腹。部屋に帰ると既に床が出来ていた。最後まで幸運に恵まれた山、感謝しながら眠りについた。

 

8月13日

 ここは沢渡温泉、昨日は日帰り温泉に入って来たので省略したが、朝風呂に浸かる、露天もあってこじんまりしたいい湯だった。片岡さんとは宿の前で解散、それぞれ仙台へ、東京へ、ゆっくり走って昼すぎ帰宅した。
 目標変更、中山往復計画大成功、徳沢園もよかった、峠沢のプラッツもよかった、二度と登ることもない静かな頂き、大展望、幸運な沢渡温泉。体力的にもちょうどいっぱいという感じ、こういう夏山もこれが最後かな。みんな十分齢をとった、立派なおじいさんだ。