tsu-tusac’s blog

山とスキーの記録

1960 07 八ヶ岳全山縦走

八ヶ岳全山縦走

1960年7月

参加者      島田富夫    狩谷 求    平塚 尚     伊東 毅

7月17日
新宿発(0:10)=小淵沢(5:50~6:05)~小海線踏切(6:30)~棒道(7:45~8:25)~見返坂(9:40~9:55)~延命水(10:10~10:20)~見晴台(11:40~13:05)~屏風岩(13:30)~雲海(13:50~13:55)~押出川(14:40~15:30)~青年小屋(17:35)

  スケッチブック  1日目行程


前日午後3時ごろから駅で並ぶ、前には2人だけ。座り込んで待っていると通行人にじろじろ見られて気分が悪い。間もなくみんなやってきてほっとした。みんな相当にでかいザックだ、背負えるのかな。当然座席はゆうゆう確保、車中騒々しい。小淵沢で下車、もう明るくなっている。とぼとぼと歩き出し、1回休んで棒道着、朝飯を食べたがうまくない。ザックは重くピッチはゆっくり、トラック道から草原の中の登り、風がなく暑い。去年とは時間が違うので感じが違うがやがて延命水の水場到着。冷たくていい水だが、そばでキャンプしていた連中が水の中に煤を入れて感じが悪い。一息入れて急坂を登る、苦しい登り、「ガンバ!」の声をかけて登る。展望台(見晴台)で昼食、おにぎりはまずいのでフランスパンをかじった。紅茶がうまい。島田の米にラジウスの石油が沁みこんで使い物にならなくなったので、ここで捨てて行く。午後もみな不調、荷物が重いからしかたがない。雲海と言ってもガスばかり、編笠が顔を見せたり隠れたりしている。このあたり石楠花がきれいに咲いていた。何とか押出川、青年小屋への捲き道分岐に到着、ここで平塚が水を発見。去年は気がつかなかったのか、涸れていたのか。みんな元気がないので編笠は登らず捲き道を行く。この捲き道があまりいい道ではなかった。途中でみんなと別れて先行し、青年小屋に到着、キャンプの心得を聞いてキャンプサイトを見に行く。少し湿っている、国有林だからそこらの木は燃やしちゃいけませんとのこと。水場に行く途中にキャンプした跡があり、指定地以外でキャンプしないで下さいとの立て札があった。間もなくみんなも到着して設営、うまく張れた。次はかまどを作って飯の仕度、大分暗くなってきた。火付けがうまくない、それでも飯は炊けたが、ラジウスの調子が悪く、いろいろやってるうちにコッフェルをひっくり返して、折角の野菜スープがオジャンになってしまった。ポタージュだけで我慢、真っ暗になってテントの中で食事、食器洗いは暗いのでやめ、寝ることにする。毛布を出して、いらないものはザックに放り込む、背中が固いが何とか寝てしまった。

7月18日
起床(6:00) 青年小屋コル発(9:10)~ノロシバ(9:50~10:00)~権現岳(11:00~11:20)~旭岳(11:55~12:15)~ツルネ(12:45~12:55)~キレット小屋(14:15~14:40)~赤岳南峰(17:50)~山頂小屋(18:10)

      2日目行程     シャクナゲ

寒くて目が醒める、2時ごろだ。狩谷がシュラフで3人が毛布だが、両側から毛布を持っていかれて寒くてたまらない。ズボン下もないし、寒くてふるえていたが耐え切れず、一番に起き出して薪集めに行く。狩谷がゴソゴソ起きてきて知らない間に食器洗いに行った。あとの2人はゆっくり、他のキャンプはみんな起きていて「オハヨウゴザイマス」に加えて「マダネテルンデスカ」と言われた。飯を炊いて味噌汁を作ろうとしたが平塚が味噌を忘れてきたので小屋に分けてもらった。案外親切だった。そんなことで手間取って出発は9時過ぎ、ガスが流れる中、倒木の多い林を抜けると稜線に出る。ノロシバ、編笠が見え、ギボシにかかっているガスが時折晴れる。浮石だらけのガラガラ道を通ってギボシを捲いて権現にかかる。この辺から暑くなってきた。権現は縦走路にザックを置いて岩峰を往復、ギボシとどちらが高いのかな。権現の下りは短いがいやなところだった。旭岳付近では赤岳は雲の中、阿弥陀は時々見える、ツルネまで来ると赤岳が姿を現す。キレット小屋に下りてお茶、フランスパンがかびていたがそのまま食べてしまった。島田と平塚が水汲みに行ってくれる。ここからは400mの登り、道はガレの中を行く、天狗尾根の岩峰がニョキニョキと面白い。大分薄暮れてきて、小さな虫がたくさん飛び出す。うるさいだけなら我慢できるが、何十匹とまつわりついて、ところかまわず食いついてくるので困る。空を見上げると虫で灰色に見えるし、前を歩くズボンの尻にも数十匹がとまっている。耳の穴だの首の中、口の中から鼻の穴、目玉にまで飛び込んでくるから始末が悪い。虫に気を取られて足をふみはずしそうになったり、まさに助けて!である。やっとの思いで山頂到着、コース最大の登りも虫にやられて、そちらばかりに気をとられて逆に辛さを感じなかったようだ。とにかく着いた、今日は小屋泊まりとする。気楽でいいが賄いの米を1人2合とられた。食後外へ出てみたら大分晴れてきた。まだガスはあるけど、それがかえって幻想的な雰囲気、黒々とした山波が水墨画のようだった。2階に上がって寝る、布団があるので暖かい、今日は十分眠れた。


7月19日
起床(4:05) 出発(6:15)~石室コル(6:35)~横岳(7:50~8:15)~硫黄岳(9:10~9:25)~夏沢峠(9:55~10:45)~根石岳(11:25~11:35)~東天狗(11:55~12:05)~中山峠(14:15~14:30)~中山(14:55)~高見石小屋(16:05)~白駒ヒュッテ(16:40)~キャンプ指定地(16:55)

      3日目行程       大同心

朝は周りが騒がしくて目が醒めた。大分空が白んでいるので4人でご来迎を拝もうと外に出る。晴れて遠くまで良く見える。ここは日本の真ん中だから晴れていさえすれば何でも見えるというわけだ。そのうち太陽が昇る、山でご来迎を見るのは初めてだったが、期待したほどきれいではなかった。3日目にしてこんな天気になった、やっぱり晴れていたほうがいい。小屋に入って飯を食ってキジ打って出発。新しい靴でかかとが靴擦れ、大事に歩くしかない。石室まではジグザグのザレ道、横岳は岩峰をどんどん捲いて主峰を目指し、主峰だけはてっぺんまで登る。ここまでノンストップ、みんな調子がいいようだ。ジュースを飲んで大ダルミまでザレ道の下り、大同心がすごい迫力だ。硫黄の石室は素通り、天然記念物キバナシャクナゲの立て札をを見ながら硫黄の頂上、火口壁の縁に立つ。いい天気だ、夏沢峠に下りて山彦荘に入り、水場を聞いて水汲みに行ったが遠かった。ここからは北八ツ、ここまでは去年歩いたがこの先は初めて。樹林帯を抜けてミカブリに出るがあまり頂きらしくない。ここからまた砂礫の道になり、天狗が目の前に見え、その手前にある岩峰が根石岳のようだ。このあたりはまだ南八ツ的で日陰がないので照らされて暑い。東天狗の頂上は狭い、中学生の遠足と見られる大群がやって来たので、ちょっと下がったところの岩峰に避難したが、大勢なのでやかましいこと。八ヶ岳に遠足とは、こちらはまじめに登っているのに、ちょっとがっくりさせられる。中山峠までは岩がゴロゴロしていて歩きにくい、その上暑いので意外に苦しめられた。峠から中山までは林の中のゆるい登り、中山は山頂らしい感じがしない、何が何だか分らないうちに着いて、ここからの下りがまた単調で長い。やっとの思いで高見石の小屋に着いた。わらびの漬物を出してくれた。そこからまた同じような道を白駒池へ、水はあまりきれいじゃない。白駒ヒュッテによって話を聞く、幕営料1人20円。キャンプ指定地まで池を3分の1周、先着キャンパーが大声を出してるので、これは今晩は悩まされそうだ。テント場は昨日あたりも張ったあとがある、残っているモミの葉が新しい。そこにさらに葉を追加してクッションを良くする。かまど作り、薪集め、炊事、そのうちに日が暮れてくる。今日は足が靴擦れで痛いので何をするのも辛く、時間がかかる。飯もあまりのどを通らない。食器洗いは明日にしてテントに入った。案の定、となりのキャンプが大きい声を上げているので、こちらも対抗して声を張り上げて歌を歌った。今日は良く眠れそうだ。

7月20日

起床(6:00) 出発(9:00)~麦草峠(9:30~9:45)~大石峠(10:00)~茶臼山(10:55~10:15)~縞枯山(11:35~11:45)~縞枯・雨池山のコル((12:05~13:15)~雨池山(13:30)~三ッ岳Ⅰ峰(13:50~14:00)~横岳ヒュッテ(15:00~15:40)~横岳北峰(15:55~16:10)~亀甲池(16:48~17:05)~双子池ヒュッテ(17:35)

        4日目行程      道標


目が醒めたら大分明るくなっている。時計を見て「おい、5時だぞ起きようぜ!」と声かけて起きて、もう一度時計を見たらなんと6時だった。あわてて炊事、時間がないのでラーメン、能書き通りに作ったが美味くない、食わなきゃいけないので流し込んだがこれはうまくなかった。池の水をそのまま飲むのはまずそうなので沸かしてポリタンに入れたらフニャフニャになってしまった。遅くなって一番最後に出発、麦草峠までは登りとも言えない楽な道で、明るい草原の真ん中に小屋があった。ここで水を分けてもらった、井戸水だそうだ。小屋のおばさんが茶臼の登りの楽な道を教えてくれたが、よく分らなかった。茶臼までは本日最大の登り、平塚が少々参っていたが、こちらはそれほどではなかった。茶臼を下って縞枯山の登り、縞枯の頂上から南八ツがよく見えた。雨池山の鞍部で昼食、黒い大きなパンがうまい、ハムがたくさんあってゲップが出たが、おかげで元気回復。雨池山をひと登り、下って三ツ岳へ急な登り、ところどころに梯子がかっている。トリコニーを引っ掛けて登ったが大したことはなかった。石楠花の木が多い、花は咲いていない、三ツ岳は岩がゴロゴロ、乾徳山みたいだ。三つほど岩峰を過ぎてちょっと下り、ほどなく横岳ヒュッテ。麦茶を出してくれた。今日はここで泊ろうかと思ったが亀甲池回りなら楽に双子池に入れると言うので、さらに進むことにする。横岳までひと登り、頂上は二つ、南八ツがよく見える、蓼科山も目の前、大河原の斜面がきれいだ。亀甲池へは急降下、いい道だが結構長い。池が下の方に見えてから15分ぐらい下って池畔に着いた。水は少ないが池の底が亀の甲羅のようになっていて面白い。水は白駒池よりもきれいだ。ここから郡界尾根を越して双子池へ30分、雌池のほとりに着いて対岸まで3分の2周して雄池との間にあるヒュッテに入った。テントを張っている人もいたが今日は小屋泊まりとする。雌池の水は洗い物、雄池の水が飲料水だって、ぜいたくなものだ。すぐ夕食、なす炒め、シチューその他、シチューはベーコンがいかれてたのか味が悪く飲めなかった。この小屋はセルフサービスで感じがいい、先ほどまで近くで騒いでいたのが静かになったのでどこへ行ったのかと思ったらテントの方へ行ったらしい。助かった、我々だけで小屋の半分を占領、布団も自分達で何枚使っても勝手、気楽で良い。しばらく1人で山日記など出して読んでいると、島田と平塚は歌を歌ったりしていた。

7月21日
起床(5:10) 出発(8:15)~大河原峠(9:00~9:10)~将軍平(10:05~10:25)~蓼科山(11:00~11:30)~将軍平(11:50)~馬返し(12:40~12:45)~桐陰寮(14:15~15:00)~蓼科牧場(15:20)

        5日目行程


ちょっと寒かったけどよく眠れた。飯がすぐ出来てきた、顔を洗っておかずを作って、食べてキジ打って出発、これで200円は安い、池も全コース中一番良かった。小屋の裏手からすぐ登り、笹の原で汗をかいて暑いがすぐ頂上に出ると風通しがよく涼しい。休まずに大河原へ、小屋の前でひと休みして蓼科山へ最後の登り。汗が出る、しばらくすると道は平坦な道になるが倒木が多い。将軍平では小屋を作っているのか、あばら家のような小屋があり、3~4人の人がいて何となく感じが良くない。ザックを置いて頂上に登る、いい天気なので周りが良く見える。富士山だけ隠れて見えないが、北アは赤岳の時よりもはっきり見える。白樺湖や寮が見えないかとお鉢回りをしたが寮は確認できなかった。将軍平に下りてザックを背負うとやっぱり重いが速いピッチで下る。分岐点でひと休みして番小屋の方に下りた。小松川の寮を過ぎたあたりで島田が飯にしようと言ったが水もないので先まで進み、番小屋でせんぎに下りて顔を洗い、水を飲んだ。バス通りに出て寮に入ったがいやに静かだ。主寮に行ったら田口さんがいて、みんな中遠足に行ってるのだそうだ。狩谷と二人はもう2~3日残り、島田と平塚は帰るのでキャンプ道具などをこちらに収容する。間もなく担任のギロチンが帰ってきたのでザックを担いで牧場のキャンプ地に移動する。牧場にはギロが話してくれ、牧場の人が案内してくれた。木立の中、誰もいない静かないいところだ。水は近いし薪も多い。すぐ設営し、ザックの中をかき回し昼飯の用意をする。バーナーで紅茶を沸かし、黒いパン、目良のサポートのおかげで食料は豊富だ。食後かかとの靴擦れの治療に寮に行く、田口さんがやってくれた、汚い足を出して申し訳なかった。近くにいた1年生にローソクを分けてくれと言ったら寮の中を走り回って探してきてくれた、感心感心。半分ビッコをひいてキャンプに戻ると狩谷がかまどを作っていてくれた。夕飯を早めにすましてキャンプファイヤーを見に行った。見てるだけだがみんな楽しそうで少し羨ましい。帰ってからはすぐ寝た。

7月22日
蓼科定着
朝起きたのは8時ごろ、もう暖かくなっている。ゆっくり朝飯、予定もないので気楽だ。牧場のバス停に行って見ると目良がうろうろしていた。今日は寮の方が1日フリーだということで牧場で遊ぶ、昼飯にフランスパンと紅茶をご馳走する。その後寮の方へ行って目良と別れ、狩谷と2人で境川で魚をとろうと2時間ほど遊ぶ。水をせき止めてかい出して悪戦苦闘、魚なんているのかと思ったが、小さなかじかを1匹捕まえた。折りたたみのコップに入れてキャンプに持って帰った。夕食の終わる頃、今日の昼からキャンプしている2人連れが一緒にファイヤーをやりませんか、と言うのでやりましょう、やりましょうということになって、急いで後片付け。彼らが切ってくれた薪を組み上げて点火、ガソリンをぶっかけたらすごい勢いで燃え上がった。周りで歌を歌ったり、4人だけだったけど楽しかった。

                          4人だけのファイヤー


7月23日
桐陰寮発(9:41)=バス=茅野発(15:33)=新宿(20:47)

今日はいよいよ帰る、長かった。昨日の二人連れは愛知工業の生徒だそうだ、まじめでいいやつらだった。朝飯を食ってから寮に行って目良に500円借りた。桐陰寮入口からバスに乗ったが途中で狩谷とはぐれてしまい、白樺湖と寮の間を行ったり来たり、相当焦ったがやっとの思いで再会、これで随分時間をロスした。白樺湖から茅野までバス、混んでいたが座れた。駅前でそばを食べて15時33分の鈍行で帰る。腹がへるが金がないので仕方ない、カンパンをかじって飢えをしのいだ。大月で2人とも座れ、8時47分新宿着。